オペラと歌舞伎の森

オペラディスクの聴き比べ。
東京発、オペラ、歌舞伎鑑賞の備忘録、兼ミニレビュー。
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ばらの騎士 ドレスデン歌劇場引越公演 神奈川県民ホール

今年の一連のばらの騎士の中で、一番完成度が低かった様に思う。何のために指揮を準メルクルからルイジに変更したのか?一幕後半の元帥夫人とオクタヴィアンの会話など、素晴らしい部分は素晴らしかったのだが、全体的に細かなところに神経の行き届いた指揮とはとても聞こえなかった。三幕などオケが崩壊してしまうのか、レコードの針が飛んだのかと思えてしまうところがあって、傑作ばらの騎士の初演の歌劇場の演奏だけに非常に残念。一幕と三幕のガヤやソリストのディクションの出来、些細なことだが非常に重要な部分に伝統に培われた重みが全く感じられない。
今年のばらの騎士の列に加わることのできる価値は、唯一代役のマルシャリンの声の美しさくらい。オックスのリドルも、ゾフィーの森麻希も、悪いとまでは言わないが、そこそこ。

新国立劇場の脇の固めの素晴らしさと演出の美しさ、チューリヒの引越公演にも耐えうるプロダクションの作り込み…などに比べると、ドタバタのうちに引っ越して、有名劇場が有名なオペラを演りました、というレベルにとどまっている。今回一番高かったチケット代でも予算が足りなかったのか、引越公演の限界をまざまざと見せつけられた形。


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「フィガロの結婚」新国立劇場

前回のプロダクションの再演だが、伯爵夫人とフィガロが大変よく、「あ、やっぱりこのオペラは名作だったのだ」と改めて感じさせる内容。指揮も収縮がよく、室内楽のような響きの中からうまく感動を引き出す。たまに不協のように聞こえるアンサンブルと、やや不調の林美智子のケルビーノに注文がつくが、とにかく、伯爵夫人のコヴァレヴスカの、品格の中にもロジーナの芯の強さを感じさせる歌唱とビジュアル的な美しさは絶品。ホモキの演出も前回よりもドタバタの騒音が抑えられたような印象を受け、スマートな洗練さがより受け入れやすくなった。
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「タンホイザー」 新国立劇場

芸術監督が替わり、10周年のシーズンのオープニングを飾るからには、さぞ力も入ろうかと思いきや、肩透かしをくらうほど、力の入っていない演出と小規模な印象の内容。「エレクトラ」の時は素晴らしかった演出家のペーター・レーマンの、簡素なアクリル板の柱と映像効果だけの、現代とも古典ともつかぬごちゃ混ぜの中途半端な変化に乏しい演出は、オープニング、ワグナー、10周年、といった祝典的雰囲気にまったくそぐわない。
内容としては2幕、3幕は作品の力と、ヴォルフラムのガントナー、エリーザベトのメルベートの熱のこもったリートで大変感動的だったが、パリ版とドレスデン版の混合の1幕のベーヌスベルクが、なんだかもったりと、ベーヌスの愁嘆場のメロドラマのようなエディションになっていて、普段聴きなれたタンホイザーの1幕のすっきりしたテンポよいやり取りの魅力がなく、それ故もあって、いまいち入り込めなかった。
ハインリヒのボンネマは「ローマ語り」はそれなりによく聴かせたが、全体的に鼻にかかったしゃくりあげるようなテノールで、見せ場の歌合戦やその他の部分で、「タンホイザー」としての説得力に欠けていた。ベーヌスのワトソンも「トーキョーリング」の素晴らしいブリュンヒルデの時と比べると、手放しで絶賛はできない。
前週のガラコンでは歌手を振り落とさんばかりの勢いで切れ味よい指揮をしていたオーギャンも、なんだか散漫な指揮。
ただ、それでも充分感動的な2幕と3幕は、ひとえにメルベートとガントナーと、リヒャルト・ワグナーの功。
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ばらの騎士 チューリヒ歌劇場 オーチャードホール

前奏曲、切り込むようなメストのスタートダッシュの指揮にオケがついて行かずどうなることかと思ったが、幕が開いてからはラストまでぴったり息が合い素晴らしい演奏を聴かせた。メストの指揮は音楽の甘美な部分では実にまろやかに温かみをもってオケを響かせ、沈黙の間の取り方も絶妙。一方で盛り上げるところは巧みに迫力を出し切る。
カサロヴァは名に恥じぬ実力、元帥婦人のシュテンメも往年の名歌手の域までは行かずとも、現代最高水準と言ってもよいであろうレベル。男爵のムフは余裕の歌唱で舞台を支え、特に二幕の特出した出来のよさを牽引していた。アンニーナ、一幕のガヤを除く全員がかなりの高水準だったが、準主役級の中ではファニナルとイタリア人歌手(この演出では中国の歌人形だが)が傑出して、それぞれ解釈、美声を見事に披露していた。
新鮮な演出はDVDの映像で見ていた限りでは少々わかりにくいものだと思われていたが、舞台で全体の動きを把握しながら観ているとあながち悪いものではなかった。二幕の「老い」のマイム、摺りガラスのラスト、ト書きとは違ったプラスαの解釈ではあるが、このオペラの本来のテーマにはぴったり合致しており、味わい深い余韻を残す。
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スペードの女王 サイトウキネンフェスティバル 8/28

ゲルマン役のガルージン、エレツキー公爵役のヘンドリックス、そして、叙情的な部分での小澤征爾の音楽つくりが大変良く、それによって全体的にはなかなかに満足のゆく舞台、ではあったが、このオペラの怪奇小説チックな物語運びを輪郭づくるスリリングな意味での音楽のメリハリがどうも大人しく、ややコンパクトにまとまってしまった印象も。嵐の合唱や女帝の登場など、もっとド派手に盛り上げても良かったのではないかと思ってしまうほど平坦に流されたような気がする。一方、叙情的な部分、リーザが入水する運河の場など、大変細やかに研ぎ澄まされた集中力と力強さで、このオペラの内面的な「生きる苦悩(オネーギンに通ずるものとしての)」という、普段プロットの面白さの陰に隠れがちな文学的核心をえぐり出す事に成功していたように思う。
欲を言えば、陰の主役の伯爵夫人や脇のトムスキーなど、外堀がもう少ししっかりしていれば、このオペラの魅力がより正当に引き出されていたであろう。
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ばらの騎士 新国立劇場

素晴らしい。。。

今年の「ばらの騎士」イヤー、このプロダクションが優勝候補になる可能性が高い。

指揮はゆったり構えていて、特に新しい発見や抉り込む鋭さなどはないが、典雅で洒脱な印象で悪くはない。
しかし、なにはともあれ主役4人は当然ながら、脇にいたるまで、歌手陣が大変充実していて、下手な引っ越し公演では考えられないほど「贅沢」な後味を残す出来だった。
演出、視覚的にも大変美しく、ある意味、カラヤンとシュワルツコフの映像に見られる原点的演出とは違った方向性の新演出のなかでは、最も感動的に、最も視覚的に美しく見せることのできたこのオペラのプロダクションの一つではないだろうか。

詳細は次回聴きに行った後に。
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ばらの騎士 カルロス・クライバー盤(映像)★★

色々な意味で「惜しい」演奏。この楽劇にはそもそも『レルヒェナウの男爵オックス』という題名案もあり、シュトラウスとホーフマンスタールの二人は長らくその題名を愛称として互いに自分たちの作品を呼び合っていたらしい。この作品を聞き込めば聞き込むほど、一見ただの半道仇役のようなこの人物が、実は音楽的に大変重要な役割を果たしていることが判る。
元帥夫人は女の主役でこの曲の要であり、オクタヴィアンも個性的なズボン役なので、その二人にどうしても耳が傾きがちであるが、「レルヒェナウの幸福のワルツ」をはじめとする多くの魅力的な旋律の主人公であり、全三幕を通して常に舞台にあってベースの音楽を型づくっているのはまさにオックスである。

さて、この盤のオックスのユングヴィルトはひょうげた雰囲気や明るさという点において、なかなか魅力的にこの役を演じているが、如何せん、低音が美しく伸びないので、各幕の最後が「お見事!」と締めくくられない。ライブとしては豪華にもイタリア人歌手役にフランシスコ・アライサが登場するが、美声を聴かせるためだけの役である彼にしても、最高潮の高音が裏返ってしまい、「お見事!」という拍手がイマイチ送ることが出来ない。オケも「ばらの献呈」や三幕の元帥夫人の登場という大変大変重要な場面で音を外してしまって、ライブとはいえ、完璧主義的な美学に貫かれたこの作品にとっては見逃すことの出来ない傷となってしまっている。
ギネス・ジョーンズの元帥夫人は繊細な女心の表現として大変レベルの高い歌唱を聴かせるが、この作品の要の大役としてはいささか迫力に欠ける。個性的なファスベンダーと正確なルチア・ポップの安定感あるコンビ、そして、カラヤン盤二種類の映像と比べて色彩感覚が豊かで新鮮な舞台美術の二点は魅力的なのだが…。

クライバー×シェンクの映像ならば、多少の粗があっても勢いでカバーできてしまっている「こうもり」の方が良い出来と言わざるを得ない。

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「ばらの騎士」R・シュトラウス | permalink | comments(0) | trackbacks(0)

蝶々夫人 新国立劇場(最終日)

本日は初日と正反対の出来。ピンケルトンのジャコミニが面目躍如の本領発揮で、彼独特の声を見事に聴かせる。タイトルの岡崎も前回のセーブの利いた歌唱より、ややダイナミックな表現で、二幕のドラマよりも一幕の二重唱、終幕をより深く聴かせた。けれども絶叫にならないところが彼女の良さ。
その反面オケが初日とうって変わって集中力に欠け、どうも上滑った感じでまとまりがなかった。歌手のコンディションなら仕方ないとも思えるが、器楽でここまでの差は不思議。
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ばらの騎士 ベーム盤★★★★★

シュトラウスと親交のあったベーム−と考えると、この作品が作曲者の意図に近い形で演奏されているであろうという先入観に堕ち入ってしまうが、その前提を抜きにしても、この盤は「ばらの騎士」の骨子に最も肉薄した演奏であるといえる。
当時において(それは現在でも変わらないし、恐らく未来永劫変わらないであろうが)最も甘美かつ切れ味鋭く、かつ新しいこの音楽が何故魅力的なのかという輪郭を、ベームは装飾的な要素を加味していくのではなく、逆に極限まで削ぎ落として、その場その場の編成、ライトモティーフ的な作曲法がまるで視覚的に見えるかのように音楽のトリックを明かしてしまう。しかし、白日のもとに曝け出されたこの音楽の、なんと完璧な美しさであろう。歌手、オケもそれぞれ素晴らしいが、それに言及するまでもなく全体として名演。
数ある魅力的な「ばらの騎士」の録音の中でも、この音楽に酔いたい時、自然とプレイヤーにかけてしまう一組。
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「ばらの騎士」R・シュトラウス | permalink | comments(0) | trackbacks(0)

オルフェオとエウリディーチェ 新国立劇場

新国立バレエの新たな試み「エメラルド・プロジェクト」の新作。グルックのバロックオペラ「オルフェオとエウリディーチェ」を編曲した、歌手とオケの演奏に合わせてドミニク・ウォルシュ振付のコンテンポラリーが躍られる。
物語を現代の設定にするも、それが最近のストーリー仕立てのバレエにありがちな「ストーリー過剰」な雄弁さに堕ち入ることなく、また、バロックの「オペラ」とコンテンポラリーの「バレエ」が互いにどちらかに歩み寄ったりすることもなく、双方が自然に融合しており、なかなか巧みな作品となっていた。
特に目立ったのはエウリディーチェの湯川麻美子。「カルミナ・ブラナ」の時のフォルトゥナでの表現も大変素晴らしかった彼女だが、長い四肢でのモダンの表現は彼女一流で圧倒的な存在感。
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バレエ公演 | permalink | comments(0) | trackbacks(0)

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★★★=大変に優れている
★★=ある部分で優れている
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